全社DXで業務の断捨離と効率化を実現。年2,600時間の削減に成功した業務も

本田技研工業株式会社
設立
1948年(昭和23年)
従業員数
連結 197,039 名 単独 33,065 名
※2023年3月末時点
事業内容
二輪車(オートバイ)、四輪車(自動車)およびライフクリエーション事業(汎用製品:耕耘機・芝刈機・除雪機・発電機・船外機)
利用部門
全社の申請業務、部門別の事務業務
この記事の目次
導入後 1年経過:2023年8月
DXで業務の断捨離と効率化の実現へ
どのような背景で、Questetraをご活用されていますか?
Honda ではデータやデジタル技術を活用し、より良い製品やサービスを提供するため、社内のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進しています。事業やモノづくりの業務プロセスをはじめ、社内業務のプロセスを見直し、DXを進めることで、既存業務の効率向上と新価値の創造拡大を目指しています。
その中で、事務業務のDX化は重要なテーマです。DXによる合理化で捻出した時間を本来ヒトが行うべき創造的業務に使うことを目指して改革をすすめています。まず私たちが取り組んだのは、自分たちの業務を整理し、役割と作業(タスク)を明確化することでした。人とシステムそれぞれが得意な作業を処理することで業務効率や品質がさらに向上します。また、将来的には人工知能の活用を目指しています。人工知能の実現のためには、人と人工知能が得意な業務を整理しておく必要があります。
複雑化する業務の整理には業務プロセスの可視化が最も重要です。ワークフローツールとして帳票の電子化を行うシステムは複数存在しますが、スイムレーン(処理担当者)ごとにタスク(作業工程)が整理されており、ワークフロー図で可視化されているサービスはあまり存在しません。「標準化されたルールに則ったワークフローであり視認性が良い」「作成したワークフロー図をそのままシステムとして稼働させられる」などが、業務改革の最重要項目と考え、国際標準(ISO19510)であるビジネスプロセスモデル表記法(BPMN:Business Process Model and Notation)でワークフロー図が作成できるQuestetra BPM Suite(以下、Questetra)を選びました。
Questetra で作成したワークフロー図を、そのままワークフローアプリ(システム)として稼働させることが可能です。システム化構築支援者やチェック者はワークフロー図を見るだけで、システム化する前に業務の課題ポイントも見えてきます。そのため、業務整理とシステム化による合理化を同時に行うことで、根本的な改革に近づきます。また、運用しながらの小さな改善を積み上げることも可能でアジャイル的な開発も実現可能です。
選定ポイントは何でしょうか?
全ての部署、社員のワークフローの構築や複雑な事務プロセスの改革に活用できる点です。事務部門の悩みはシステム部門が一旦作ったシステムの改修は大がかりとなるため、変更ができず使いにくい状態を強いられることがあります。また、そもそもシステム開発の順番が回ってこず、紙の申請から抜け出せないといった基本的な悩みがありました。そのため、誰もが自分でワークフローアプリを作成・メンテナンスできる必要がありました。
Questetra はプロセスの視認性が良いだけではなく、ノーコードでのシステム開発が可能です。このように開発学習コストが低い点が選定ポイントとなっています。また、簡単な紙の承認業務のDX化だけではなく、複雑化する業務プロセスのDX化も今回のDXのターゲットになっています。複雑なワークフローの整理には、BPMNに則ったワークフロー図が描け、視認性と共通認識が重要です。Questetra では、複数部署や担当者、システム処理が混在する複雑なワークフローアプリも容易に作成でき、タスクや業務の見直しを Questetra のアプリを構築しながら実現することが可能になりました。
さらに Questetra は、外部クラウドサービスとのAPI連携が可能です。Honda では Microsoft 製品などのサービスを利用しています。Questetra と Microsoft 製品のエクセルやシェアポイントとの連携は保存や転記の工数を削減できるため、選定の重要なポイントでした。また、入力したデータ項目をPDF化し、簡単にメールに添付して送付できることも、頻度の高い業務として選定ポイントの一つとなっています。
どのような業務に利用されていますか?
社内の申請業務やレビューが必要な業務など、様々な業務で利用しています。
申請業務については、ソフトウェア利用、研修受付、社用車利用、総務の申請などHondaの事務処理全般で利用を開始しました。
業務例として、社内向けFAQ構築が挙げられます。同業務では、事務局が頻度の高い質問を設定し、該当領域の担当者に「回答素案作成」のタスクが割り振られます。その後、レビュアや校正担当者に「レビュー」「校正」タスクが順次割り振られ、完成したFAQがグループウェアに自動投稿され関係者に最新情報として共有されます。今後、校正や翻訳業務などをAIに置き換え、更なる効率化を狙っています。
導入効果をお教えください
Questetra を利用することで、業務プロセスの可視化がすすみ、業務の断捨離や合理的なプロセス検討、業務の分担作業による効率化が実現しました。例えば、前述のFAQ管理業務の場合、本来は回答素案作成者やレビュアが集まり、会議によって業務を進める必要がありました。しかし、Questetra を利用することで、担当者間のタスクが明確になり、またタスクの受け渡しは自動化され、業務関係者は各自のペースで効率的に作業を進められるようになりました。メールを使った受け渡しで生じる、メール記載の手間もなく、割り当てられたタスクに集中することができます。よくある、未読メールとしての埋没もなくなり、確実にタスクが遂行されるようになりました。さらに事務局は、どこでタスクが滞っているのか確認ができるため、進捗状況把握も可能になりました。
このほかの事例として、総務の申請書の中には、委託先への業務依頼を伴う申請があります。マイクロソフト内に構築したフォルダーへ申請書を自動格納し、そのフォルダーを委託先と共有を開始しています。いままでエクセル帳票に転記したり、メールで申請された添付書類をフォルダーにアップロード保管したり、メールで委託先に送付したりしていました。これらの煩雑な作業を Questetra で自動化することで、データの一元管理と効率化の推進が可能となっています。
このような事務業務のDX化は、次世代の改革を見越したデータ利活用や人とAIの融合など本質的な改革の素地づくりも狙って推進しています。
今後の方向性をお教えください
社内のあらゆる事務業務で Questetra の活用をすすめています。全社員自らワークフローアプリを作成し、変化する業務に対して柔軟に対応できるように、社内での教育体制を確立しています。そのため、スキルレベルに応じた講習会の実施や、エキスパートによる支援・相談の窓口・利用者同士のコミュニティーなど、多様な支援体制を構築しています。
申請した誰もがワークフローアプリの構築が可能な環境を提供しています。一方で、誰もが使える環境のため、設定間違いから生じる予期せぬ障害を最小限にしつつ、構築ノウハウを伝授する確認会を行っています。また、この確認会は別の側面もあり、DXのエキスパートがプロセスを確認することで、より合理的なプロセス提案や理解しやすいUIの構築をすすめています。この様に業務部門に対し、プロセスの改革とDXの進化を同時にすすめ、改革の加速を促しています。
今後も Questetra をコアな基盤として、外部のマイクロサービスとのAPI連携や人工知能へのタスクの置き換えなど行っていき、多様なHondaの業務に対し短期間に様々な対応を行っていきたいと考えています。
Honda は、独創的でチャレンジする企業文化を大切にしています。当たり前と思っている無駄な慣習的な業務も「聖域無き見直し」により、DXとして身近な改革を積み上げることで、若さや創意工夫の風土を今一度現場に波及させ、その風土を製品に還元していきたいと考えています。Questetra によるプロセス改革は、Honda の改革を担う重要なサービスの一つとして考えています。
※ 本事例は2023年8月時点の情報です
導入後 3年経過:2025年7月
DXの民主化が生み出した成果と生成 AI との連携
Questetra BPM Suite の活用状況や プロジェクト全体の進捗をお教えください
3年間で1,000アプリを展開、サプライチェーン全体に定着
導入から約3年が経ち、 Questetra BPM Suite で作成されたワークフローアプリは約1000件に達しました。製造・営業・管理などの各部門に加え、二輪・四輪・汎用の各事業部など、サプライチェーン全体で利用されています。
導入当初から「1000アプリの作成、月間10万プロセスの稼働」を目標に掲げていました。シミュレーション段階で、この水準まで利用が拡大すれば十分な効果が得られると見込んでいたためです。
現在、目標に沿ってDXプロジェクトは順調に進展しており、効果についても「1プロセスあたりの効果」をシミュレーションベースで積み上げて評価しています。
非エンジニアでも使いやすく、現場で利用が広がる
現場で高く評価されているのは「非エンジニアでも扱いやすい」という点です。維持管理やメンテナンスが容易であり、複雑な業務フローも直感的に設計できます。実際に製品を使い込んだユーザは、自然と“ファン”になり、自分たちでMS Officeとの連携やPDF自動生成などを実現し、業務プロセスを主体的に管理できるようになっています。
教育とルールによるガバナンスの確立
Questetra は「誰でも簡単にアプリが作れる」という強みがあります。その反面、”野良アプリ”が多発して管理が難しくなるリスクもあります。
そこでHondaではアプリ作成者向けの教育にも力を入れてきました。基本的な作成方法に加え、ルールや禁止事項などのガバナンスも教育プログラムに組み込まれています。利用開始時には最低3時間の研修を受講してもらうことで、「利用者が責任を持って使う」ことを徹底し、利便性とガバナンスの両立を実現しています。
具体的な成果があればお教えください
年間45,000件のメールを削減、2,600時間の効率化
運営側(DX事務局)としても興味深い例を1つ挙げてみます。ある業務では、従来メールで行っていたやり取りをワークフローアプリに切り替えたことで、年間45,000件のメールをゼロ化しました。これにより、属人化や担当者不在による業務停滞といった問題が解消され、時間換算で約2,600時間の工数削減につながっています。
収集した情報は自動的に起票され、プロセスがスタートします。事務局が確認後、26ものSwimLaneの担当者に業務が割り当てられ、効率的に進行します。以前は、全体の進捗状況の把握や、担当者不在時の業務停滞など、属人的な運用が課題でした。
また、生成 AI を組み込むことで、対象業務かどうかの閾値を数値で判断し、適切な基準まで下げる取り組みも進めています。導入時には理解を得るのに苦労した場面もありましたが、アジャイルに改修を重ね、進化できる仕組みとして定着しています。
生成 AI とBPMSの連携についての活用事例を教えてください
社内問い合わせ対応の自動化
DX事務局では、社内のDXに関する全ての問い合わせを受け付けています。Questetraのアプリで受付から回答送信、履歴参照までを一元管理する仕組みを構築し、運用しています。
以前は別システムで受け付けた問い合わせをメールへ転記して回答しており、履歴管理も煩雑でした。Questetra で管理することで、転記作業や複数システムを行き来する手間が解消され、問い合わせ対応にかかる工数を大幅に削減できました。
また、各ツール担当や推進支援担当者など、多様なエキスパートが回答者として担当し、多様な問い合わせにも迅速に対応できる体制が整いました。
問い合わせ用アプリには生成 AI が組み込まれており、生成 AI は4つの機能を担っています。
- 問い合わせの要約(内容把握が難しい場合の理解補助)
- 問い合わせの分類(運営側の意図に沿った分類が可能に)
- 回答作成(約4割は繰り返しの質問のため、即時回答)
- 問い合わせ内容の事前チェック(回答者が理解できる内容かを事前に確認)
これらの機能により、生成 AI を利用した回答の精度が向上しています。正しい問いが正しい回答を導くという点で、人と同様の効果が得られています。
今後の方向性をお教えください
利用業務の拡大と生成 AI 活用
オペレーション作業(事務作業)の Questetra 化(ワークフローアプリ化)は大きく進展しました。今後は、製品開発領域への活用と生成 AI の組み込みが重要と考えています。製品開発領域のさらなる合理化は必須です。全社レベルの業務は基盤開発として多くのツールが導入・運用されていますが、開発現場レベルのプロセスやアイデア創造など、さらなる取り組みが求められます。
また、Questetraの利点である「担当者ごとに生成 AI を設定できる」価値を活かし、定型業務のAI化を推進することが重要です。現在はチャット形式でのAI利用が進んでいますが、今後はQuestetraのプロセスに組み込み、効果の定量化や品質向上を目指していく必要があります。
開発の現場では、Questetra は「申請書を作るためのツール」として認識されがちです。しかし、本質的には業務プロセスそのものを進化させ続けるためのプロセス管理基盤です。個々の作業を単に電子化するだけではなく、改善サイクルを回し続けられる点にこそ価値があります。また、そのプロセスを管理する能力は、業務品質やスピードの差となって現れ、結果として組織としての競争力の源泉になると考えています。
Questetra を「誰でも業務アプリを改善し続けられるプロセス管理基盤」として再定義し、開発現場というイノベーティブな領域でも改善やアイデアを継続的に形にしていくことが、今後のチャレンジです。
今後も生成 AI を中心とした製品開発改革が進むと考えていますが、その基盤となるDXがあってこそのAI活用です。最初の一歩であるプロセス改善は、今後も継続して取り組むべき重要なテーマです。
※ 本事例は2026年3月時点の情報です
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