Episode 4. BPMN 図だけで業務システムが構築できるか?
4-1. 各タスクの定義が各入力画面に!
ソフトウェアの進化は恐ろしいモノで、BPMNでビジネスプロセスを描けば、「業務システム」が出来上がる時代になりました。
特に「BPM Suite」と呼ばれるソフトウェアでは、角丸四角のタスク毎が自動的に入出力画面になります。早い話、上流からプロセスが到着すると、担当者は情報入力を求められます。
ちなみに「ワークフロー」と呼ばれるソフトウェアと目的とする所に大きな違いはありません。概念的に「BPM Suite」に内包されるので、ハマチとブリの違いみたいなものです。 (編注:ん???)
ただ、ビジネスプロセス定義が「描画設定」できる為、ループや分岐と言った複雑なルール設定や、あるいは定義そのものの変更管理が容易に実現できます。
4-2. 何種類のアイコンを覚える必要があるか?
BPMNには、意外と多くの、意外と細かい表記規定があります。
しかし他方、「BPMNを認識理解する」と標榜している「BPM Suite」でも、実はその9割を理解できません。そしてソフトウェア製品によって理解できる範囲が異なります。
ビジネスプロセス図を壁に張り出して周知徹底させたい場合や、あるいはオーダーメイドの情報システムを発注するために仕様定義したい場合などには、多くの規定を学習しても良いかも知れませんが、「BPM Suite」への入力を前提とするなら、最初から「理解してくれる規定」だけを学べば良いです。
各ソフトウェア製品のサポート範囲詳細は各販売社からの情報に任せるとして、総じて言える事は以下の通りです。
- アクティビティ (マーカー5種類)
多くのBPMSは通常タスクのみを理解し、いずれのマーカーも非対応 - 開始/中間/終了イベント (マーカー10種類)
メール等を外部から受信しプロセスを起動させることは多くのBPMSが対応。一部BPMSでは、プロセス途中でのメッセージ送信、プロセス終了時のメッセージ送信に対応している。途中で特定時刻を待つものや、特定時刻に自動的にプロセス開始できるものもあり。 - ゲートウェイ (マーカー5種類)
データによる単一選択[XOR分岐]と、全ルート選択[AND分岐]は、多くのBPMSが対応。一部のBPMSでは、1つもしくは複数の分岐を選択[OR分岐]することが可能。イベントによる単一選択は多くが非対応。
4-3. BPMNを学ぶ目的
前述の通り、BPMNはデータの取扱いは定義できません。また業務を実施する組織員の地位や権限を定義する事もできません。プロセスの流れについても、曖昧な表記を認めています。さらに打ち明ければ、一つのビジネスプロセスを、様々な方法で記述することができてしまいます。また、ビジネスプロセスの詳細な定義をするには、別途文章等で詳細に記述する必要があるでしょう。場合によってはビジネスプロセスがかかえるリスクについての考察も別途まとめておく必要があります。
しかし、BPMNによるビジネスプロセス図は、「多くの閲覧者に直観的にビジネスプロセスを理解させること」ができます。
- 改善議論
現状のプロセスを描画、改善後のプロセスを描画、リスクの分析 - 説明
新人教育(業務マニュアル)、株主報告(SOX法対応)
さらに「BPM Suite」等のソフトウェアを活用する事で、今この瞬間の現状や一定期間の結果など、現実の処理状況が把握できるようになります。
- 統制
標準化(属人手法の排除)、不正防止(業務ログの取得) - 生産性向上
滞留検知(エラー検知)、再利用性向上 - 人事考課
個人別グループ別の生産量測定、時間当たりの生産量測定
何を目的にBPMNを学ぶのかは人によって異なりますが、まずは例えば上記のいずれを目的とするのかを決めてから学習を進めたい所です。もちろん、同じ目的意識を持ってチームで学習を進めるに越した事はありません。
4-4. 最後に
最後の章になりました。感動の涙で、ここまで読んで下さっている貴方の顔が見えません。 (編注:もともと見えるものではありません)
企業の競争力の源泉は業務プロセスです。企業はビジネスプロセスを変化させ続けなければなりません。そしてまた、企業は変化し続けるビジネスプロセスを把握共有し続けなければなりません。ベテランスタッフの知見にばかり頼るのではなく、BPMNを活用したビジネスプロセス管理(Business Process Management)を推進しては如何でしょうか。
<課題の回答例>