近年、国内においては少子高齢化に伴う「生産年齢人口」の減少が問題となっています。生産年齢人口とは、大まかにいうと「国内で労働に従事できる年齢の人口」をあらわす経済学用語であり、日本においてはおおむね15歳~64歳が該当するといわれています。そして、この生産年齢人口は、日本では1992年をピークに減少を続けています。

このように「働き手」が減少する中で、それでも国際社会の競争に打ち勝っていくためには、企業は労働生産性を向上させなければなりません。この労働生産性向上のための手段の一つとして注目されているのが、RPA(Robotics Process Automation/ロボットによる業務の自動化)です。

RPA は急速に普及している

冒頭に述べた国内の状況を反映するかのように、近年では RPA ツールを導入する企業も増えています。株式会社 MM総研がおこなった RPA 国内利用動向調査によれば、2019年1月時点での国内企業における RPA の導入率は32%とのこと。これは半年前の調査から10ポイント増加した数字であり、こうした結果からは国内で急速に RPA の普及が進んでいることがわかります。

また企業規模別に見てみると、年商1,000億円以上の大手企業が39%なのに対し、年商1,000億円未満の中堅・中小企業でも導入率は27%となっています。 導入率では大手企業がリードしている形ですが、中小企業でも RPA 導入が盛んになっている様子がうかがえる数字ですね。

RPA 導入に「初歩でつまずく」パターンとは?

しかし、このように急速な普及が見られる一方で、RPA ツールを導入しても「思ったほどの成果が出ない」という事例が多いのも実情です。このように「成果が出ない」ことについては、さまざまな要因が考えられますが、ここでは 企業が RPA を導入した当初に陥りがちな失敗パターンについて解説します。

パターン1. そもそも RPA の立ち上げがうまくいかない

RPA の導入に失敗するパターンとして意外と多く見られるのが、「RPA ツールで何をしたいのか?」という目標が具体的に見えていない、というケースです。いくら「生産性の低い業務を自動化して、社内の生産性を向上させよう」というスローガンを掲げていたとしても、これではビジネスプロセスの立ち上げが上手くいかないのは必定です。

このように RPA 導入の目的が曖昧なままでは、無料でテスト導入ができるタイプの RPA ツールを入手したとしても、どうしたらよいかわからないまま、ただ時間だけが過ぎてしまいます。これでは、せっかくの「無料お試し期間」も意味がありません。


パターン2. 立ち上げた RPA ツールを使う人がいない

「操作が難しくないこと」は、RPA ツールを導入する際に重要となるポイントのひとつです。実際、RPA ツールの多くは、プログラムに関する専門的な知識がなくても操作できるように設計されています。ソフトウェアやシステムの種類にもよりますが、IT の専門家でなくても、1~2週間集中して操作を学べば、ひととおりの操作をおこなうことができるのも RPA ツールの特徴です。

とはいえ、RPA ツールの操作を覚えたり、実際に作業をおこなうソフトウェアロボットを作成したりするには、ある程度の時間が必要なのは事実です。システム部門のような専門部署であればこうした業務にリソースを割くことも比較的容易かもしれませんが、専門外の部署の人員が、通常の業務をこなしながら、RPA ツールの習得や作成をおこなうのは難しい面もあります。そして、みんなが「時間がない」といって RPA の運用を先延ばしにしていると、せっかく導入した RPA ツールも「使う人がいない」という状態に陥ってしまいます。

パターン3. RPA を現場が使おうとしない

一方、導入や作成といった課題をクリアしてソフトウェアロボットを作りあげても、これを現場が使わない、というケースもあります。

なぜなら、たとえ労働生産性が低かったとしても、そのことに慣れてしまうと現場ではあまり不都合を感じなくなるからです。このように、業務の現場においては、効率の悪さについてもそれなりの工夫がおこなわれ、現場なりの「仕事の進め方」ができあがってしまっているケースが往々にして見られます。

こうした工夫を否定して、一方的に自動化を押しつけるような RPA の導入は、現場からの反発を招いてしまうかもしれません。RPA を無事に導入できたとしても、 業務の実情に即していなければ、現場から「作業の受け渡しが難しい」「エラーが多い」「作業が止まることが多い」といった不満の声が上がる可能性は高いでしょう。そして、RPA の導入とともに、こうした「不満の声」にも対応できる体制が構築されていなければ、現場のスタッフが RPA を受け入れることは難しくなります。

失敗パターンの共通点とは?

さて、これまで3タイプの失敗パターンをあげてきましたが、これらのパターンに共通しているのは「RPA で何を実現するか」というビジョンがはっきりしておらず、導入の目的や目標が組織内で共有されていないという点です。

「何のために」という目的や目標がはっきりしていなければ、「成果の出る RPA 導入」 は実現できません。また、こうした状態で無理矢理に RPAを導入したとしても、それは上層部からの押しつけ型の施策であり、成果があがるかどうかは怪しいものです。たとえば、社長が「RPAを導入しろ」という漠然とした指示を押しつけ、RPA 作成担当者は現場の声を無視して作成した RPA を押しつけ、現場では RPA を持て余す、といったパターンがこれにあたります。

もし、「企業間の競争に打ち勝つための労働生産性の向上」が RPA 導入の大きな目的であるなら、業務プロセスのどの部分を自動化するのかという点と、その作業を自動化することによって得られるメリットについて具体的に検討する必要があります。

ここでいうメリットとは、

  • 他社との競争においてキーパーソンとなる有能な社員の業務負荷を半分に軽減
  • 競争優位性を高める開発にリソースをより多く投入するために、特定部門全体の業務にかかるコストを10%削減

といったような、RPA 導入によって実現したい「具体的な目標」と言い換えることもできます。

この「具体的な目標」と「作業を自動化するポイント」は合わせて考える必要があります。そうでなければ、RPA の導入は不完全なものとなってしまうでしょう。

ワークフローを「見える化」することの重要性

とはいえ、自動化の対象となる作業を業務プロセスの中から見つけ出すことは容易ではありません。なぜなら国内においては、企業の大半がホワイトカラーの社員がおこなう業務の流れ(=ワークフロー)について把握できていないという現状があるからです。たとえば、大雑把な古いマニュアルはあったとしても、実際の業務の細部まで現実に即してマニュアル化やパターン化をおこなっている企業はまだまだ少ないのが実情です。その一方で、属人性の強い旧態依然とした業務スタイルは、上の項で述べたような RPA 導入の失敗パターンを企業がおこなってしまう大きな理由にもなっています。

現在の業務プロセスがしっかりと整理・把握されていなければ、RPA によってどの作業を自動化すればよいのか、そして、その RPA によってどのようなメリットが組織にもたらされるのかも分かりません。逆に、経営層・RPA 作成者・現場の3者が「業務の流れ」について共通の認識を持ち、そこから「なぜ?」「なんのために?」というポイントをクリアして RPA ツールの導入を進めるのなら、その業務における RPA 化が成功する可能性は飛躍的に高くなります。

このように、RPA ツールを導入するのに理想的な環境を整備する上で重要なカギとなるのが、ワークフローの「見える化」です。RPA の導入にあたってワークフロー図を作成し、業務の流れを「見える化」することのメリットは、以下の2点に集約されます。

トップダウンがスムーズにおこなえる

企業における上層部からのトップダウン(意思決定を伴う指示)は強い力を持っています。しかし、こうしたトップダウンも、従業員を納得させるだけの根拠がなければ、単なる「命令」になってしまい説得力がありません。そこで、トップダウンをおこなう上層部の人間が、現場の業務プロセスをしっかりと理解していることが重要となります。

上層部がワークフローを「見える化」して整理することにより、そこではじめて「この作業の自動化をおこなったら〇〇時間削減=人件費換算で△△円削減できる」といったような具体的なメリットも認識できます。これはトップダウンをおこなう人が、「RPA で労働生産性を向上させるにはどうすれば良いか」という最も重要なポイントを、現実的にとらえるということでもあります。

こうして「RPA 導入によるメリット」を数字の上でも確認できると、上層部は「どうしたらこの RPA を実現できるか?」ということを本気で考えるようになるでしょう。ここでさらなる具体的な知恵が生まれてきます。

たとえば、RPA により「360時間の作業時間の削減」ができることを見通せたならば、以下のようなトップダウンをおこなうことも可能です。

  • RPA 作成者と、RPA を実施して実際に作業時間の削減をおこなった部門に、年間削減コストの50%を賞与として分配する。
  • RPA 導入により余ったリソースを、今後の成長分野にシフトさせる。
  • RPA を成功させることをミッションとして、RPA 作成者を RPA プロジェクトのリーダーに任命する。

上記のような決定は上層部からのトップダウンでなければなかなか実現できません。現場や RPA 作成者が自発的に RPA による生産性向上を進めたくなるトップダウンや、トップダウンをおこなうための原資についてしっかりと検討するためにも、上層部が業務の「見える化」をおこない、ワークフローや改善効果について把握しておくことは重要です。

現場のモチベーションが向上する

上の項で述べたようなトップダウンにより、RPA 導入の成功が自分たちへの賞与や、RPA 人材としての重要なポジションへの登用などにつながることがわかれば、現場や RPA 作成者のモチベーションは向上します。つまり RPA 導入の成功を、現場が主体的な目標として捉えるようになるのです。このように当事者意識を持つ事で、現場からは積極的な意見が出るようになり、前向きなアイデアも生まれてくることでしょう。

ビジネスプロセスが「見える化」され、これらが組織内でしっかりと共有されれば、「上層部による意思決定」と「現場の作業改革」と「RPA」の共存が可能になります。プロセスのどの部分を自動化するかを具体的に決めることができ、なおかつ RPA の導入が、業務の現場や RPA 作成者のメリットにもつながることをみんなが理解できれば、

  • RPA 作成者が途中で RPA 作成を放置する
  • 現場がせっかく作成した RPA を利用しない

といった失敗パターンは回避できるでしょう。

BPM ツールの利用

BPM とは、ビジネスプロセスマネジメント(Business Process Management)の略であり、「継続的に業務プロセスを改善する」経営管理の概念です。

BPM では、ワークフローを定義してビジネスプロセスのモデリング(見える化)をおこない、それを運用・修正・管理しながら業務を効率化して、成果を高めていきます。この「運用・修正・管理」というサイクルにおいて効力を発揮するのが、BPMS (BPM Software / BPM Suite)あるいはBPMツールと呼ばれるソフトウェアです。BPM ツールを使用すれば、簡単に業務フロー図が作成でき、さらに作成したフロー図に沿ってシステムを自動で構築することもできます。そして、業務の流れや、それぞれのタスクを「誰がどのくらい」「どれだけの時間をかけて」おこなうのかが飛躍的に把握しやすくなります。

RPA の導入を成功させるためには、業務の流れを正しく整理・把握し、理解することが極めて重要なのはすでにお伝えしましたが、ワークフローを「見える化」して正しく理解するためには、BPM ツールを使用するのがオススメです。

BPM ツールの選び方

「BPM ツール」でネット検索をおこなうとさまざまなソフトウェアが表示されます。こうした中でどれを選ぶかは非常に迷うところですが、BPM ツールの選び方には、下記の3つのポイントがあります。

  • 効率的にワークフロー図が描ける
    • ワークフロー作成のための機能が豊富で、「条件による分岐」など少し複雑な内容であっても、誰でもワークフローを簡単に作成できること(簡単に作成できないと、必要な部分を簡略化してしまう人や、最後まで作成しきれない人が出てきてしまう可能性があります)
  • 作成したワークフロー図を簡単に共有できる
    • BPM ツールを使用すれば、チーム内でワークフロー作成ルールを統一することができます。そして、作成したフロー図を簡単に共有できれば、チーム内で業務に対する共通理解を持つことが容易になります。
  • 「ワークフロー図通りに仕事がおこなわれているか」を管理できる
    • 作成したワークフロー図に沿って、進捗管理用のシステムが自動で構築される機能があれば、作って終わり、指示を出して終わり、という「やりっぱなし」を無くすことができ、タスクの放置も防止できます。

Questetra BPM Suite は上記の3つのポイントを押さえた上で、 Web 上でワークフロー図を作成し、業務の「見える化」(モデリング)や、フロー図に沿ったシステムの自動構築をおこなうことができる BPM ツールです。多くの BPM ツールは、サーバーへのセットアップなど利用するまでの準備が大変ですが、Questetra BPM Suite はクラウドサービスとして提供されているため、お申し込み後すぐに利用することが可能です。

ぜひこの機会に、無料で BPM に沿った業務のモデリングを体験してみてはいかがでしょうか。

参考

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