RPA(Robotics Process Automation) は、人間が担当してきた作業(主に定型作業)を、PC 内のソフトウェア型ロボットが代行/自動化するという概念です。
日本でも2016年ごろから RPA という用語が登場し、その後急速に広まり出しました。いまや、政府が推進する『働き方改革』においても RPA は重要なキーワードのひとつとなり、製造業を中心に RPA ツールの導入も盛んになってきています。
RPA ツールの導入によりルーチン作業を自動化できれば、人間はより重要な作業のみに注力することができるため、生産効率や品質の向上も期待できます。しかし、単に RPA ツールを導入しただけでは、こうした成果につながるとは限りません。「RPA 導入の効果が見られない」という企業では、RPA が処理する作業の効率は上がっても、そのために他の作業負担が増えているというケースもあります。これは企業におけるビジネスプロセスの把握が不十分であるため、解決すべき課題が見えていないからなのです。
1990年代の ERP ブームで起こったこと
米オラクルや独 SAP の相次ぐ日本市場参入により、「レガシー大国」である日本でもレガシーシステムから ERP への移行が進み、さらに ERP の日本製品も多く誕生しはじめたのは1990年代以降のこと。 それまで日本企業は、開発時には計画になかった「後づけ」の機能追加や機能拡張が満載の業務システムを長きにわたり使ってきました。
こうした国内の企業が、ERP パッケージソフトの導入に舵を切ったということは、「自社業務をソフトウェア製品に合わせることを決断した」ということを意味します。それはそれで凄いことなのですが、当時ほとんどの企業ではその進め方をわかっていませんでした。ERP への移行においては、まずは BPM (Business Process Management) で「業務の見える化」をおこなうことが推奨されましたが、ユーザーのシステム開発を担当してきた SIer でも、BPM ありきの手順でおこなうシステム導入は未経験だったのです。
そして、こうした状況のなかで「導入したらなんとかなる」という甘い期待を持って移行が進められた結果、ERP は「動かないシステム」と評されてしまうことになりました。ユーザーが BPM の重要性を認識できていなかったことが原因だったにも関わらず、半ば「使えない」呼ばわりされた ERP は気の毒だったといえるでしょう。
ビジネスプロセス改善の必要性
ここで BPM の定義をおさらいしておきましょう。BPM とは大まかにいうと、業務プロセスを継続的に改善し続ける経営管理の手法のことです。
BPM により「業務の見える化」をおこなえば、「人間とシステムのコンビネーションによりどのように仕事が流れているのか」を把握することができます。そしてそこから、ボトルネックなどの問題点や業務上の課題がどこにあるのかを発見していくことができるのです。このように、業務プロセスをしっかりと把握して、業務上の問題点を明確にすることができれば、RPA や ERP といった新システムの導入により業務をどのように改善していけるかという議論も活性化していけるでしょう。
こうした新システムの導入においては、「業務の見える化」をおこなった結果を踏まえて実施することこそが成功の鍵ともいえます。

ちなみに、1990年代時点の ERP 導入で勝ち組だったのは欧米企業がほとんどといわれています。彼らは早くからパッケージソフト製品を活用しており、「システム導入は BPM ありき」ということを理解していたため、リスクを最小限にして ERP の恩恵を大いに受けることができたのでしょう。
J-SOX 法が追い風となった
2001年、アメリカの大企業であるエンロンで、簿外債務の隠蔽を始めとする不正会計が明るみにでて株価が暴落し、同社が経営破綻する事件が起こりました(エンロン・ショック)。この事件をきっかけに、アメリカでは企業の内部統制の重要性が再認識され、2002年に企業改革法として SOX 法(サーベンス・オクスレー法)が制定されたのです。
その後、日本でも2006年に「J-SOX 法(日本版 SOX 法)」と呼ばれるいくつかの制度が金融商品取引法において定められました。J-SOX 法は、大まかにいうと国内のすべての上場企業を対象に、財務報告に関する内部統制の評価や報告を義務づける制度です。そして、2008年度にこの制度が適用されるまでに、多くの企業は「業務の流れについて図式化した書類」を作成する必要に迫られました。そこで、「業務の見える化」を重視する BPM の概念が、日本の上場企業のあいだでも急速に知られるようになったのです。

BPMの基本となるモデリング
さて、それでは BPM の基本ともいえる「業務の見える化(モデリング)」は、いったいどのようにおこなえばよいのでしょうか?
業務のモデリングについては、さまざまな表記法がありますが、万人にわかりやすく図式にできるなら、特にモデリング作成のツールは問いません。紙とペンさえあれば、業務フロー図を描き、業務のモデリングをおこなうことは可能です。ここで重要となるのは手段ではなく、モデリングをおこなうことによって、業務における役割や作業工程を整理・把握し、ビジネスプロセス上の問題点や課題を明確にすることです。
またモデリングの準備として、業務に関わる複数の関係者の意見をヒアリングすることが必要となる場合もあります。これは、同じ業務に携わっていても、立場が違うと作業の進め方の認識がイコールでないケースもあるからです。モデリングをおこなう際には、業務全体でどのような作業があるかを明確化し、作業の具体的な内容(作業の順番も含む)や、それぞれの作業の担当者も明らかにしておくことが望ましいでしょう。
こうして関係者の話を聞きながらモデリングをおこなえば、 関係者みんなが納得できる「正しいビジネスプロセス図」を作成できる可能性が高くなります。これはヒアリングをおこなうことで、業務や作業に対して認識の違いがあれば、すぐに見つけることができるからです。

BPMツールを導入するメリット
ここで、忘れてはいけないことがあります。それは、BPM のモデリングは一度書いたら完了ではないということです。BPM では「ビジネスプロセスは日々改善されていくもの」と考えるため、プロセス図についても柔軟に変更・更新をおこなうことが必要となります。先ほど、プロセス図の作成にツールは問わないと述べましたが、業務の現場における変化をそのたびにプロセスに反映させる作業を考えると、作成したフロー図に沿ってシステムを自動で構築できる、BPMS (BPM Software / BPM Suite)と呼ばれる BPM ツールを導入するのがベストといえるでしょう。
こうした BPM ツールにおいては、業務のモデリングやビジネスプロセスの修正、修正したプロセスをチーム内で共有する、といったことが容易におこなえます。また、ERP や RPA といった他のツールとの連携も可能なため、BPM で描いたプラン通りに業務の自動化や改善を進めていくことができます。
BPMツールは必要な投資である
金融商品取引法(J-SOX 法)の施行で日本市場がザワついた2006年頃に比べると、たしかに国内の企業における意識の改革は進みました。それにも関わらず、いまだ「ビジネスプロセスを描くのにお金をかけない」と考える経営者は数多く存在しています。
しかし、いくら IoT だ AI だ RPA だと先端技術に興味を抱いても、BPM による業務のモデリングができていなければ、こうした新システムの導入は失敗する可能性が大きいのも事実です。こうしたことを考えると、業務のモデリングや継続的な業務改善へのアプローチを的確にサポートする BPM ツールへの投資は、企業にとって決してムダではないことがわかるでしょう。
見える化を実現するQuestetra BPM Suite
Questetra BPM Suite は Web 上でワークフロー図を作成し、業務の「見える化」(モデリング)を手軽におこなうことができる BPM ツールです。多くの BPM ツールは、サーバーへのセットアップなど利用するまでの準備が大変ですが、Questetra BPM Suite はクラウドサービスとして提供されているため、お申し込み後すぐに利用することが可能です。
ぜひこの機会に、無料で BPM に沿った業務のモデリングを体験してみてはいかがでしょうか。