社内で起きている業務上の問題の多くは「業務プロセスの不透明さ」に起因しています。たとえば、業務改善のためにせっかく CRM や RPA といったツールを導入したのに、そのためにかえって他の部署での業務が増えてしまうといったケース。なかには、システムが対応できない箇所は人力でコピー&ペーストをおこなっていたために業務が増えてしまった、などという笑えない事例もあります。これなどは効率化のために導入したITツールによって、かえって業務プロセスが複雑化してしまった典型的な事例といえるでしょう。
では、このように複雑化してしまった業務プロセスは、いったいどのようにして整理すればよいのでしょうか?
近年、こうした業務プロセスを改善する「処方せん」として BPM(Business Process Management)が注目されています。BPM は、業務のプロセスを最適化しながら、継続的に業務を改善していく考え方を表す用語ですが、その効果は業務改善だけにとどまらず、企業の内部統制など組織力にまで影響をおよぼします。
BPM の目的とおもなメリット
メリット1:業務プロセス上の問題点がわかる
BPM は大まかに下記の3つのステップで構成されています。
- ステップ1. 業務プロセスを可視化する
- ステップ2. プロセスの問題点を見つけ出す
- ステップ3. 「もっとも良い手順」に業務プロセスを最適化する
多くの企業は、業務改善のためにさまざまな新しいツールやシステムを導入しますが、冒頭にも述べたように、これは業務プロセスをかえって複雑にしてしまうおそれもあります。そして、業務プロセスが複雑になればなるほど、業務の進捗状況は把握しづらくなり、業務の遅延やサービスレベルの低下などを招きがちになってしまいます。
こうした悪循環を避けるためにも、まずは BPM の第1ステップである「業務プロセス全体の可視化」を実践してみましょう。業務全体の流れ(フロー)を図に描き、業務プロセス内で「どのような作業が」「どれくらいのリソースを費やして」おこなわれているのかということが可視化できれば、プロセスの中でどこに問題点があるのかを抽出しやすくなります。
たとえばプロセスの中で、業務が滞留しているポイント(ボトルネック)や不要な手順が明らかになるかもしれません。こうして業務上の問題点が特定できると、業務の改善にも着手しやすくなり、次のステップである「業務プロセスの最適化」にも進みやすくなります。

メリット2:業務プロセスを改善できる
業務プロセスの「見える化」により問題点が特定されると、そこから具体的な解決策を導き出すことができます。BPM では、業務プロセスを「業務の流れ」という視点から改良していきます。業務全体のプロセスのなかで「仕事がどのように流れているか」を把握できれば、改善策を検討し、プロセスを再設計・変更することも容易になります。
たとえば、冒頭に述べたような、異なる人員が同じ作業をおこなっている「重複」や、自動化できるはずの作業を人的リソースを割いて対応しているような「非効率」の問題については、下記の様な解決策が検討できます。
- 業務プロセス内で重複して作業がおこなわれているのを発見した場合は、業務プロセス内の役割を整理し、適切な人員のみにタスクへのアクセス権を与える
- 業務プロセス内において、自動化できるはずのタスクを人力で対応しているのを発見した場合、「自動化できる作業」と「人力で対応しなければならない作業」とを仕分けしてプロセスを改良・再設計する
こうして見ると、問題点やそれについての改善策も、なんら特別なものではないことがわかりますね。しかし、ここで重要なのは「業務プロセスを可視化しなければ、これらの問題点は発見できなかったかもしれない」という点です。BPM ではこうした業務プロセスの改良作業は、まず業務フロー図上でおこなわれることになりますが、再設計したプロセスの実施後に、そのプロセスが本当に効果的なのかを検証し、もし問題があった場合は再び改良をおこなうことになります。

BPM 導入によって得られる副次的なメリット
さて、これまでは BPM の目的や、BPM の導入によって得られるおもなメリットについて述べてきましたが、ここからは BPM をおこなうことによって得られる副次的なメリットについて解説していきます。
メリット3. 部署間の連携を強化できる
業務プロセスにおいて、上の項で述べたような「重複」や「非効率」といった問題が生じてしまう場合、部署間の連携が上手くいってない可能性も考えられます。たとえば、それぞれの部署が、「部署内だけで」問題を解決しようとした結果、余分な作業やミスが発生してしまっているようなケースがそれにあたります。
しかし、BPM はあくまで「業務全体のプロセス」に主眼を置いているため、部署間を横断して作用します。BPM によって「見える化」された業務プロセスでは、プロセス内で「誰が」「何をしているのか」がはっきりします。そして、可視化された業務プロセス(ワークフロー)は、対象のプロセスに関連しているメンバーが、部署の垣根を越えて業務の流れを共有・認識することを容易にします。
このようにお互いの役目が共有されていれば、関係者同士の相互理解も広がり、トラブルが発生した場合でも業務プロセス内の「どこで問題が発生」し、「何が問題になっているのか」を、迅速に把握できるようになります。こうなれば、トラブルへの対応にロスが発生することも少なくなるでしょう。

メリット4. 現場主導での業務改革がおこなえる
企業においては、組織を管理するトップが業務プロセスの把握や改良をおこなおうとするケースもよく見られます。たしかに、トップが業務改革を主導すれば、組織の再編成なども比較的容易になり、トップダウンで社員への共有もおこないやすいかもしれません。
しかし、こうした「トップ主導型」の業務改革には注意も必要です。たとえば、企業の上層部は業務の現場において「どこで」「何が」起きているのかを細部まで把握するのは困難であるため、ポイントがずれた改革をおこなってしまうかもしれません。そして、このように現場の実感を伴わない改革は社員の共感を得られないでしょう。
これに対して、BPM に基づいた「現場主導型」の業務改革では、各部門の担当者が業務プロセスの設計・監視をおこなうため、現場の実情に即して業務を改善していくことができます。また、こうした「現場主導型」の業務改革では、現場で起きていることを常に監視できるため、何か起きたらすぐに改善策を検討してプロセスに反映させる柔軟な体制が構築できます。
さらに、このような現場からの業務改善へのアプローチは、プロセスに関わるメンバーが「個人単位でも業務の効率化を目指す」という責任感を生むことになります。このように、メンバーが業務改善を「自分ごと」として捉え、個人単位でも業務改善へのアプローチをおこなうようになれば、組織全体の業務の効率や生産性にも影響するのは言うまでもありません。
メリット5. 人に依存しないプロセスを開発できる
BPM で業務プロセスがクリアになると、今まで「人」に依存していた業務や手続きも、共有や自動化といった方法で効率化しやすくなります。たとえば業務内容が「ある個人」に依存している場合、その業務プロセスは一見順調に流れているように見えても、「業務のノウハウがチーム内で共有されていないため、提供するサービスが一定化できない」といったような弊害を招いてしまうかもしれません。
また、こうした業務の属人化は、なんらかの理由で担当者が業務を継続できなくなったとき、最悪の場合は業務自体が継続できないという事態を招いてしまうおそれもあります。さらに、自動化できる作業を無自覚に「人」がおこなっているようなケースでは、人が対応しているためにかえってミスが発生したり、余分なコストが増えていたりするかもしれません。
しかし、BPM でこうしたポイントが明確になると、「個人に依存していた業務」も、チームでの共有や標準化を検討することができます。そして、サービスの品質に一定化が必要な業務や、正確性が求められる業務では、RPA ツールなどによる自動化も検討できるでしょう。
また、このように業務における不要な属人化を排除し、標準化や自動化を進めることは、企業のグローバル化や合併などに対応する上でも必要な取り組みといえます。たとえば、企業がグローバル展開をする場合であれば、国による制度・慣習の違いといった地域差に対応する上で、企業の合併であれば、両企業のシステムやプロセスの違いなどをすり合わせていく上で、BPM は重要な役割を果たすのです。

メリット6.企業の競争力を高めることができる
BPM は業務を改善するだけでなく、企業の競争力を高めるための手法としても注目されています。現在ではスマートフォンや SNS、クラウドサービスなどの普及により、多くの企業が「IT の活用」を大きな命題としていますが、その影響によりビジネスプロセスも以前と比べて多様化しているのも実情です。
また、IT 技術の進歩に伴い、顧客のニーズも日々更新されており、企業には以前と比べてさらにスピード感をもった柔軟な対応が求められています。このように常に変化を求められる状況のなかでは、固定したビジネスプロセスを長期にわたって運用し続けることは難しく、プロセス自体も常に見直しや変化を求められることになります。
しかし、BPM はこうした状況でこそ効果を発揮する手法といえます。BPM による業務のモデリングや最適化への働きかけは、企業に変化に対応する柔軟性や敏捷性を与えます。そして、こうした恒常的な業務改善へのアプローチが、業務の効率や品質、生産性への向上につながり、結果的に企業の競争力を高めることになるのです。
業務改善をサポートする BPM ツール
BPM が部署間の連携を強化し、メンバーの業務改善へのモチベーションを高める手法であることはこれまでにも述べたとおりですが、その実践には BPM ツールが大いに役立ちます。こうした BPM ツールにおいては、業務のモデリングやビジネスプロセスの修正、修正したプロセスをチーム内で共有する、といったことが容易におこなえるからです。また、ERP や RPA といった他のツールとの連携も可能であり、より複雑なビジネスプロセスを構築することもできます。
Questetra BPM Suite は、Web 上でワークフロー図を作成し、業務の「見える化」(モデリング)を手軽におこなえるようにすることで、BPM による業務改善をサポートするソフトウェアです。さらに、作成したワークフロー図に沿ってシステムが自動で構築されるため、BPM で描いたプラン通りに業務を進めることができるのです。また多くの BPM ツールは、サーバーへのセットアップなど利用するまでの準備が大変ですが、Questetra BPM Suite はクラウドサービスとして提供されているため、お申し込み後すぐに利用することが可能です。
業務を改善し、組織力を強化する第一歩として、着手しやすいプロセスから、まずは無料で始められる Questetra BPM Suiteを試してみてはいかがでしょうか。