新型コロナウイルス騒動もあり、「在宅ワーク」という言葉を良く聞きます。今後ますます一般的になるとされる「在宅ワーク」という働き方と、私たちはどのように向き合えばよいのでしょうか。
今回は、今後加速する「在宅ワーク」の働き方について、メリット・デメリットやハードル、導入時の留意点などを考えていきたいと思います。
コロナ禍が催促する在宅ワーク体制と導入メリット
日本国内で「在宅ワーク」や「テレワーク」などの働き方が急激に普及し始めたのは、2000年に入ってからです(テレワークの動向 – NTTグループ)。労働人口減少、核家族化とライフスタイルの変化、ITインフラの浸透などを背景に、在宅ワーク導入がもたらす事業の効率性・生産性向上の効果が注目されました。
2006年、第一次安倍内閣は、2010年度までにテレワーク人口を倍増させるという目標値を掲げ、一段と注目が集まりました(人事院 テレワーク推進に関する閣議決定等)。その後、ワークライフバランス、働き方改革などの政策・時流を追い風に、在宅ワークの試験的導入がみられましたが、大企業に限られたものでした。そして2020年、新型コロナウイルス対策の一環として、在宅ワークを導入する企業が急増しています。
在宅ワーク=自宅やカフェ、コワーキングスペースなど場所を選ばず、仕事をすること。
オフィスで仕事をするスタイルに慣れ親しんでいるため、在宅ワーク導入によって何が変わるのかイメージできない方も多いかと思います。在宅ワーク導入のメリットについて、主に企業側の視点からみてみましょう。
1.優秀な人材の確保と人件費の削減
在宅ワークには、従業員にとって個々の事情やスタイルに合わせて柔軟な働き方が可能になるというメリットがあります。決まった時間に決まった場所(オフィス等)にいなければならない従来型の働き方に比べて制限が少ないことは、多様な人材の雇用を可能にします。個々の事情やスタイルに合わせて働き方を選べる権利は、従業員にとって大きなメリットであり安心感につながります。
例えば子供の看病や、寝たきりの家族の介護など、やむをえない事情を抱える人もいます。その際に決まった時間・決まった場所でしか働けないと、欠勤あるいは遅刻も頻繁に起こることが考えられます。また、就業すること自体が難しいと判断せざるえないこともあります。

在宅ワークの勤務体制を整備すると、育児や介護のために退職・転職を迫られていた人、そもそも就業を諦めていた人を活用できる新たな可能性が生じます。言い換えれば、採用コストや従業員教育コストを含めた人件費を削減できることも意味しています。
2.通勤コストの削減
従業員の通勤に必要な交通費を削減できるというメリットがあります。1日当たり交通費は往復500円の場合でも、年間交通費は12万円、従業員100名であれば合計1,200万円になります。決して小さくないコストです。
また、都市部の満員電車や長距離・長時間移動を強いられる従業員の肉体的・精神的負荷も大きいことは言うまでもありません。中には、片道1時間以上かけて通勤している人も、多く存在します。その方は、往復2時間だとして、1か月で40時間、1年で480時間、つまり年間20日間は通勤移動しています。
3.管理職のスキル向上
「在宅ワーク」を導入することで、管理職が部下をマネジメントするスキル向上が期待できます。
部下をマネジメントするスキルが低い管理職は、在宅ワーク体制の下では苦労します。なぜなら、同じオフィス空間にいれば、雰囲気や勢い任せの言葉にならない業務指示であっても、空気を読める優秀な部下が受け止めてくれることがあるからです。しかし「在宅ワーク」では、要件や主旨・背景を言葉にして部下に伝えない限り、自宅にいる部下は業務指示を理解できません。
もし、報告・連絡・相談が適切にできない部下であっても、同じオフィス空間にいれば、言動や様子を観察して、こまめなコミュニケーション・指導でカバーすることが可能です。しかし在宅ワークでは、部下の言動や様子を観察することは難しくなります。

いずれの場合も、管理職にとって緊張感・難易度の高まる環境ですが、裏を返せばスキル向上が期待できる環境と言えます。ここまで、「在宅ワーク」の導入メリットを主に企業側の視点からみてきました。
大企業に限らず、中小企業でも体制整備を急いでいますが、コストの問題に加え、業務プロセスの定型化・標準化が未整備であるために移行が進まない例も多くみられます。次の項目では、業務プロセスの定型化・標準化の水準が、「在宅ワーク」導入の費用対効果を大きく左右することをみていきます。
在宅ワーク対応の鍵は業務プロセス改革
「在宅ワーク」を導入するのであれば、導入、運営コストをできるだけ低く抑えつつ、最大の効果を得たいものです。そのための鍵は「業務プロセス」です。業務プロセスとは、業務を進める過程のことです。同じ業務であっても、担当者によって手順が異なることがあります。これも一つの業務プロセスの違いです。
「在宅ワーク」導入前にどれだけ業務プロセスを定型化・標準化しておけるかが、その成否を分けると言っても過言ではありません。以下では、「在宅ワーク」を導入をした企業が陥りがちな悪いケースについて解説しています。
1.情報共有や連携ができない
互いに同じオフィス空間にいれば、言動や様子を観察しておいて、手遅れにならないようコミュニケーションをとることが可能ですが、在宅ワークでは言動や様子を常時観察することは難しくなります。同じ空間にいない中、効果的な情報共有や連携を行うためには、各メンバーが適切かつ能動的に情報共有や連携を行う意識とスキルが求められます。
同じオフィス空間にいるときからこうした習慣付け・意識付けができていて、各メンバーのスキルが醸成されている状態が理想的です。また、より手軽に情報共有が行える体制をハード・仕組みでカバーする方法も有効です。ビジネスチャットやグループウェアなど、さまざまな便利なコミュニケーションツールがあり、機能もさまざまです。
2.非定型業務が滞留する
「定型化されている業務は在宅ワークでもオフィスと同じように流れるのに、定型化されていない業務の進捗が芳しくない」という声がよく聞かれます。主な原因は、業務が属人的に進むため、周りには進捗が見えなかったりわかりにくかったりすることです。言い換えれば、業務プロセスが定まっていない、見える化ができていないために生じる非効率が原因です。
業務プロセス改革が生産性を向上させると言われますが、在宅ワークという新たな環境下で業務を行うとき、その真価が問われます。すべての業務プロセスを予め規定することは難しいですが、できるだけ定型化・標準化する意識を持つことが重要です。
業務プロセスの定型化・標準化を進める体制を、ハード=仕組みでカバーする方法も有効です。業務プロセス改善を目的としたさまざまなビジネスツールがあるので、長期的な費用対効果の観点から検討することをお勧めします。
在宅ワーク体制整備は生産性向上のきっかけに
本文では、在宅ワークの導入のメリットとデメリット・ハードルについて述べました。ポイントをまとめると、以下のようになります。
- 在宅ワーク導入にはさまざまなメリットがあること。
- 在宅ワーク体制整備は働く場所だけ変えてもうまく機能させるのは難しいこと。
- 従業員の意識付けやスキルの醸成を管理職の主導で行うこと。
- 業務プロセスの定型化・標準化を前もって行っておくこと。
上記にあげたポイントを、ご理解いただけたと思います。在宅ワーク体制整備にはコストがかかり、効果的な運用のためにはハードルが存在します。だからこそ、短期的なメリットにばかり目を向けるのではなく、業務プロセス全体を効率化できるように計画を立てます。そして従業員のレベル向上を図ることもでき、会社全体の生産性向上のきっかけにもなるでしょう。

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